百万のマルコ

百万のマルコ (創元推理文庫)

百万のマルコ (創元推理文庫)

マルコ・ポーロが牢屋で囚人たちにホラとも本当とも判断つかないようなおもしろい体験談を話して、その間だけ、囚人たちは退屈な牢屋から出られたような気分になる……という骨組みでつづられる短編連作。どの話もウィットに富んだ謎賭けがあり、それを囚人たちが考えるも解き明かせず、マルコが答えを教えてくれたようなわかんないような……そんな不思議におもしろい短編集。連作の最後にはおーっという結末も。昔は電話もネットなく、船や馬で旅をした人だけが世界を知っていたから、そういう人の話っていうのは本当に興味深かったんだろうなと思わされる。


そうそう、フビライハンのお抱えだったマルコが彼の指令で世界中のおもしろい場所をおとずれては報告していたという設定も忘れてはならない。ここで描かれるフビライハンはとてもリベラルな考えの持ち主で、ある意味理想的な君主として描かれている。国はちゃんと法律をもって治めているし、どんな宗教に対しても、ものすごく寛容な感じだし。そういう意味でも、いろんなことが百万(ほらふき)な感じのおもしろ小説である。