世界のすべての七月

世界のすべての七月

世界のすべての七月

ああなんというおもしろさ。特に驚くべき何かが起こるわけではない。ごくありふれた人々のありふれたエピソードが最後までぐいぐい読ませてしまう。69年の卒業生の同窓会と、過去の大学時代が交互に描かれ、その数十年の間に、人々が何を手にし何を失ったのか。人生はこれで終わりなのか、これからなのか。登場人物たちの年齢は自分よりかなり上だ。だが、読んでいると他人事のはずのすべての人々の苦しみ、悲しみがなぜか胸にしんしんとつもってくる。なんともいえない微妙な気分にさせられる。何作か読んでいるが、ティム・オブライエン(著)×村上春樹(訳)は、とてもいい翻訳関係(こんな言い方ないか?)なのではないだろうか。