裸者と裸者

裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争 (角川文庫)

裸者と裸者〈上〉孤児部隊の世界永久戦争 (角川文庫)

舞台は日本。政府軍、反乱軍(孤児部隊、外国人部隊、マフィア、etc)などが入り乱れて茨城を中心に関東が紛争地帯になっている。そんな中、主人公である孤児や友人になった姉妹や、一般市民がいかに暴力と戦って生きのびていくのかが描かれる。さまざまな偏見、差別、さらに戦争地域での女性の危険などが少しも逃げずに書かれているのだが、そんなにつらい内容には感じられない。それはいかなる境地に追い込まれても何とか生きていく人間たちの姿が描かれていて、読む者が偏見や差別やいろんなことを無意味なことに感じさせられ、勇気づけられるようなお話になっているからだ。まだ上巻を読んだだけなので、この作者が何を描こうとしているのか全貌は見えない。だが、どんなにぼろぼろになっても、自己の尊厳を破壊されても強く(いろんな意味の強さが描かれている。いろんな価値観で人々が動いている群像劇を見事におもしろい物語にしている)生きる人々の姿には人間が動物であるということを思い起こされ、生きている動物本来の魅力を見せられるような感じの感動を覚える。