鼓笛隊の襲来

鼓笛隊の襲来

鼓笛隊の襲来

なんておもしろい短篇たち! 日常の中に、ふと見つけてしまったもの、気づいてしまった歪みから、今までとはまったく違う世界が立ち昇る瞬間と、そのときの登場人物たちの心の動きを、穏やかな文章で鮮やかに描きだしている。9つの物語が収録されているのだが、どの作品にも、作者の優しさといじわるな視点が織り交ざり、単なる不思議な話ではない読後感を持たせている。9つの話の並びもいい。最後のお話を読んだあと、とても温かい気持ちになった。人間の強さとか悲しさとか切なさとか……そんなものの余韻も残る不思議な不思議な話ばかり。恒川光太郎の短篇集も傑作だったけど、こちらもおすすめです。