第九の日

第九の日 (光文社文庫)

第九の日 (光文社文庫)

タイトルでピンときた。著者の作品では「八月の博物館」「デカルトの密室」「虹の天象儀」などが好きなので本書はこちら側かな、と思ったのだ。テーマは「人間の心の物語」。ロボットが心をもつとはどういうことか? それを突き詰めていくと心って何??という恐ろしく深遠な世界に足を踏み込んで行くことになる。考え出すと答えが見えず腹立たしくなる。宇宙を考えるとき、いろいろな理論を読んでも、実際にイメージできないというか、やはり根本的にどういうことなの?という疑問にぶち当たるのに似ている。そしてそういうことを考えると日々会社に行ってくだらないことにあくせくしていることがばかばかしくなる。何もやりたくなくなる。それはそれで危険である(笑)。ロボットと人の恋愛もメインテーマに織り込まれ、ラストの短篇はとても美しく、また現代の不安を描写してもいて、けっこうしびれた。★★★★