コカインナイト

コカイン・ナイト (新潮文庫)

コカイン・ナイト (新潮文庫)

すばらしくおもしろくて、すごく考えさせられる本。謎に満ちた火事による殺人事件を発端に、二つの町を舞台にした壮大なシミュレーション(バラードによる、とても魅力ある物語として)がスリリングに描かれる。人間社会の健全な発展に悪は必要なのか? 普通はノー、と答えるだろう。だが、この本はその答えに、疑問を突きつける。この社会からあらゆる悪を排除したとき、社会はどう変わるのか。善良な市民とはどういうことなのか。社会が脳死していく姿とは。正直、人間はどんな社会を目指したらいいんだろう、って思った。今の建前だらけの選挙演説(住みやすい町づくり、未来のある町づくり)をしている政治家にもぜひ読んでもらいたい。